Cloudflare「エッジ超活用」大全
― Hyperdrive・Vectorize・Workers AIで拓く次世代Webの裏側 ―
本記事では、2025 年春以降に次々と一般公開された
Hyperdrive・Vectorize・Workers AI などの最新エッジ機能を
“まず動かす” 視点で徹底解説します。
☑ 手順/ベストプラクティス ☑ 指標と落とし穴 ☑ コスト最適化
を一気にチェックできる保存版です。
1. Hyperdrive徹底検証:遅延-90 %削減の“グローバルDBアクセラレータ”を数字で語る
「接続をリージョンにキャッシュ」――それだけで
RTT 200 ms超のDBでも30 ms台へ。
Freeプラン開放後はPoC必須の鉄板機能となりました。
☑ この記事でわかること(クリックで開閉)
- Freeプラン開放の背景と内部仕組み
- 既存 MySQL / PostgreSQL を
wrangler.toml
だけで移行 - 東京-ダラス実測レイテンシ & 運用時の落とし穴
1-1 | Freeプランでも使えるようになった背景と仕組み
2025 年3 月のアップデートで Hyperdrive は 1 接続プール / 1 GB ストレージ まで
Freeプランに開放されました。ポイントは次の 3 つです:
- Regional Pools が TLS ハンドシェイクと再接続を肩代わり
- Connection Coalescing でコネクションを多重化
- Adaptive Idle TTL により低利用リージョンのコストを自動最適化
1-2 | 既存 MySQL / PostgreSQL への乗せ換え手順
# ① Hyperdrive を作成
$ wrangler hyperdrive create prod-db --type=mysql
# ② wrangler.toml に追記
[[hyperdrive]]
name = "prod-db"
origin = "mysql://user:pass@db.internal:3306/app"
# ③ Worker から呼び出し
import db from "cloudflare:hyperdrive";
const rows = await db.execute("SELECT NOW()");
ベストプラクティス:
コネクションプール数 = 想定同時接続×1.5 を上限。
max_idle = 60 s
未満にしすぎるとコネクション再生成が頻発し、
“プチタイムアウト”の連鎖が発生します。
1-3 | 実測レイテンシ比較と運用時の落とし穴
接続方式 | 初回 | 50-p99 |
---|---|---|
Direct (東京→ダラス) | 243 ms | 268 ms |
Hyperdrive 経由 | 29 ms | 32 ms |
約-88 %を達成。ただし Idle TTL を 10 s 未満 にすると
プールのリージョン切替が頻発しボラタイルな遅延が再発するため注意しましょう。
2. Vectorize入門→応用:分散ベクトルDBでLLM検索を“エッジ完結”させる方法
Vectorize はDurable Objects × HNSWで実現する
超軽量ベクトルDB。テキスト埋め込みを
“生成→インデックス→検索” までエッジ PoP 内で完結できます。
☑ この記事でわかること
- 内部アーキテクチャ & Durable Object シャーディング
- Embeddings + DO で作るリアルタイム類似検索
- コスト最適化:シャード / レプリカ戦略
2-1 | 内部アーキテクチャを図解
Shard = 1 DO + SQLite + HNSW のミニ DB がリージョンに多数配置され、
Warp Routing で最短リージョンへ到達します。
hash(キー) ▶ 上位8bit
を Shard-Key に採用すると、
セッション単位で地理的ローカリティが保たれ命中率が向上します。
2-2 | Embeddings×Durable Objects で作るリアルタイム類似検索
// worker.js(抜粋)
import { Vectorize } from "workers:vectorize";
export default {
async fetch(req, env) {
const q = new URL(req.url).searchParams.get("q") ?? "";
const embedding = await env.AI.run("@cf/baai-bge-base-ja", { text: q });
const results = await Vectorize.index("docs")
.query(embedding, { topK: 5 });
return Response.json(results);
}
}
わずか 40 行弱で日本語意味検索 API が完成します。
2-3 | コスト最適化:シャーディング & レプリカ戦略
- Write-Heavy:
single-writer + N read replicas
(TTL 5 min) - Read-Heavy:Geo replica のみ、Queues + CRON で 5 s 同期
- Cold Partition:30 日無アクセス Shard → R2 エクスポート
3. Workers AI×LoRA:GPUサーバレス推論を“5 行”で走らせる裏技集
50 モデル超の OSS コレクションと
AI Gateway を活用すれば、
“LoRA 微調整 → エッジ AB テスト → コスト監視” が全自動化できます。
3-1 | カタログ活用術 & Free枠モデル
ai.models.list()
で以下の主要モデルが Free 枠に出力されます:
- 言語:llemma-8b, gemma-2b
- 画像:Stable Diffusion XL
- 音声:Whisper-v3
3-2 | LoRA 微調整モデルを 5 行で推論
import { ai } from "@cloudflare/ai";
export default {
fetch: (req, env) =>
ai.run("@cf-public-x/sd-ja-lora", { prompt: "富士山と桜" })
.then(res => new Response(res.image,
{ headers: { "Content-Type": "image/png" } }))
};
3-3 | AI Gateway でコストを可視化
gateway.ai.metrics()
→ Slack 通知の鉄板フロー:
- RPS, Avg Duration, GB-sec を取得
- 日単位の閾値を超えたら
wrangler alerts create
- 「請求ショック」前にスロットリング → モデル統合
4. D1+Durable Objectsで作る“ほぼリアルタイム”同期アプリ設計図
D1 はライト級 RDB、
Durable Objects は排他ロック付き K/V。
両者を組み合わせることで、秒単位で整合するコラボアプリが構築できます。
4-1 | メッセージング / コラボエディタの設計パターン
▶ 書き込み:DO で同期 & 排他ロック
▶ 確認応答:D1 で強整合 SELECT
これにより UI ジャーキングが最小となります。
4-2 | D1 マルチリージョン運用 TIPS
- レプリカ:
d1 replicate --region
(12 PoP まで) - Write-Routing:
cf-geo-country
で Primary へ 307 Redirect - Cache Control:
stale-while-revalidate=2
で体感を維持
4-3 | CRON × Queues の障害回復
// ワーカー内
queues.produce("retry-topic", failedTx);
export default {
queue(batch) {
for (const tx of batch.messages) {
try { apply(tx); } // D1 へ再適用
catch { batch.retry(tx); } // 30 回までリトライ
}
}
}
5. Observability & Shield:Radar×Bot Fight×Advanced DDoSで可視化と防御を同時強化
Cloudflare のセキュリティ機能は
「見える化 → 自動防御 → SASE 連携」 がワンストップ。
24 時間以内にゼロトラスト化するチェックリスト付きで解説します。
5-1 | Bot トラフィック ML 判定ロジック
1 秒あたり4,600 万 HTTP リクエストを二段階 ML(ヒューリスティック+行動学習)
でスコアリング。2025 年時点は モデル v9
を運用中です。
5-2 | Magic Network Monitoring × SASE 連携
社内ルータから NetFlow を EDGAR PoP へ送信 →
DNS トンネリングを検知した瞬間に Access-Policy を block へ自動切替、
というユースケースが増えています。
5-3 | 24 時間以内にできる「ゼロトラスト化」チェックリスト
- Bot Fight Mode →
ON
(Free 可) - WAF →
Managed Ruleset: Cloudflare Managed
- DDoS Managed →
Enhanced Protection
- Access →
Email-OTP / OIDC
5-4 | 最新事例:AI スクレイピング防御の舞台裏
2025 年5 月、某メディア企業は AI モデル訓練目的の
Large-Scale Crawlers から 12 Gbps の流量を被弾。
新機能 AI Labyrinth を有効化した結果、
クローラはフェイクページ群へ誘導され、
実ページ到達率は 5 % 未満 に低下しました。
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